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【2025年11月施行】建築基準法施行令改訂で内装制限が緩和!何が変わる?
2025年11月1日、建築物の防火・避難関係規制を見直す「建築基準法施行令の一部を改正する政令」が施行されます。カーボンニュートラル実現に向けた木材利用促進が主な目的で、内装制限をはじめとする防火関係規制が合理的に緩和されました。
この記事でわかること
- 内装制限の基本的な定義と目的
- 法改正に至った背景とカーボンニュートラルとの関係
- 2025年11月施行の改正における8つの主要ポイントと具体的な条文
- 内装制限緩和で可能になる新しい材料や工法
- 緩和措置を受ける際の注意点と専門家相談の重要性
そもそも「内装制限」とは?

内装制限とは、火災時の安全性を確保するため、建築物の壁や天井の仕上げ材料や下地材に不燃性能を求める規制です。建築基準法施行令によって定められており、火災による延焼拡大や有毒ガスの発生を防ぎ、避難時間を確保する目的があります。
特定の用途や規模の建築物では、防火区画内や避難経路となる階段室などで、不燃材料または準不燃材料の使用が義務付けられてきました。木材など可燃性の高い材料は原則として使用できず、設計の自由度に制約が生じていました。
法改正で内装制限緩和に至った背景

日本政府は2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げており、温室効果ガスの吸収・貯蔵効果を持つ木材の建築物での利用促進が重要な施策となっています。木材は成長過程でCO2を吸収し、建築物として使用されている間も炭素を固定し続けるため、脱炭素社会の実現に大きく貢献します。
国土交通省は2021年以降、技術的知見の蓄積に応じて建築規制の見直しを段階的に実施してきました。2025年4月には構造関係や確認審査の合理化が施行され、今回の11月施行はその流れを受けた防火関係規制の見直しです。安全性を維持しながら木材利用を拡大するため、最新の防火技術や検証データに基づいた合理的な規制へと転換が図られました。
出典:国土交通省「建築物に係る防火関係規制の見直し等について」
2025年11月の建築基準法改正のポイント

今回の改正では、以下の8つの項目について見直しが行われます。
- 防火区画等に係る室内の内装制限の見直し
- 小屋裏隔壁に係る制限の緩和
- 無窓居室の判定基準の見直し
- 防煙壁として扱うことのできる対象の拡大
- 自然排煙口に係る建築材料規制の緩和
- 避難及び消火上必要な敷地内の通路の見直し
- 既存の建築物への制限の緩和
- 建築基準法の規制対象とするエレベーター、小荷物専用昇降機の範囲の見直し
各項目について詳しく見ていきます。
防火区画等に係る室内の内装制限の見直し
防火区画の壁や天井について、仕上げ及び下地を不燃材料または準不燃材料で造る従来の要件に加え、「国土交通大臣が定める基準に従い、これに準ずる措置が講じられたもの」も認められるようになりました。
改正された条文では、以下のように規定されています。
前項の建築物の部分で、国土交通大臣が定める基準に従い、当該部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造ることその他これに準ずる措置が講じられたものは、特定防火設備以外の法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画する場合を除き、前項の規定にかかわらず、床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画すれば足りる。
引用:国土交通省「新旧対象表」
具体的な措置の内容は別途告示で規定されますが、仕上げ材の被覆厚の基準などが材料ごとに示される見込みです。国土交通省の担当者によれば、仕上げのみの防火性能でも対応可能になるため、下地材の選択肢が大幅に広がります。
小屋裏隔壁に係る制限の緩和
小屋組が木造で建築面積が300平方メートルを超える建築物について、避難上及び防火上支障がないものとして一定の基準に適合する場合、小屋裏への隔壁設置が不要となります。
改正により、新たに以下の条文が追加されました。
その各室及び各通路について、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げ、排煙設備の設置の状況及び構造その他の事項に関し避難上及び防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する建築物
引用:国土交通省「新旧対象表」
小屋裏の直下に強化天井を設けるなど、国土交通大臣が定める基準を満たす場合が対象です。各室や通路の壁・天井の内装が一定の防火性能を持ち、排煙設備の設置状況が十分であれば、小屋裏隔壁を省略できます。
無窓居室の判定基準の見直し
無窓居室の判定において、排煙口の面積を一律に規定するのではなく、排煙口及び給気口の設置位置と性能に応じた面積で評価できるようになりました。
改正された条文では、開放できる部分の範囲が以下のように拡大されています。
開放できる部分(天井又は壁(床面から天井までの垂直距離に応じて国土交通大臣が定める部分に限る。)にある部分に限る。)の面積の合計が、当該居室の床面積の五十分の一(火災時に生ずる煙を有効に排出することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる給気口及び排気口を有する場合にあつては、給気口の開口面積、排気口の高さ及び居室の床面積に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した割合)以上のもの。
引用:国土交通省「新旧対象表」
従来は天井または天井から下方80センチメートル以内の部分に限定されていましたが、改正後は壁の一部も対象となります。火災時に煙を有効に排出できる構造方法を用いる給気口と排気口を設置する場合、給気口の開口面積、排気口の高さ、居室の床面積に応じて算出した割合で判定されます。
防煙壁として扱うことのできる対象の拡大
火災時の煙の流れを制御する防煙壁について、認められる構造の範囲が拡大されました。従来の不燃材料に加え、準耐火構造も防煙壁として扱えるようになります。
改正された条文では、防煙壁の定義が以下のように明確化されました。
間仕切壁、天井面から五十センチメートル以上下方に突出した垂れ壁又ははりその他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので、準耐火構造であるもの(その下端から床面までの垂直距離が居室の床面積に応じ国土交通大臣の定める距離以上であるものに限る。)又は不燃材料で造り、若しくは覆われたもの(以下「防煙壁」という。)
引用:国土交通省「新旧対象表」
準耐火構造の防煙壁は、下端から床面までの距離が居室の床面積に応じて国土交通大臣が定める距離以上である必要があります。天井面から50センチメートル以上下方に突出した梁も、防煙壁として扱えることが明確化されました。
自然排煙口に係る建築材料規制の緩和
排煙設備の排煙口のうち、排煙機を設けない自然排煙口については、不燃材料で造る必要がなくなりました。
改正前は「排煙設備の排煙口、風道その他煙に接する部分は、不燃材料で造ること」と規定されていましたが、改正後は以下のようになりました。
対象が「排煙機を設ける排煙設備」に限定され、自然排煙口はこの不燃材料の義務から外れました。自然排煙口では高価な不燃材を使用しなくてもよくなるため、コスト削減が期待できます。仕上げ材の選択肢も増え、設計の柔軟性が向上します。
一方で、排煙口の設置位置については以下のように規定が強化されています。
排煙口は、第一号の規定により区画された部分(以下「防煙区画部分」という。)のそれぞれについて、当該防煙区画部分の各部分から排煙口の一に至る水平距離が三十メートル以下となるように、天井又は壁(床面から天井までの垂直距離に応じて、排煙口を設けた場合に火災時に生ずる煙を有効に排出することができるものとして国土交通大臣が定める部分に限る。)に設け、直接外気に接する場合を除き、排煙風道に直結すること。
引用:国土交通省「新旧対象表」
排煙口の位置や距離の基準は従来通り厳格に維持され、火災時の煙を有効に排出できることが明確に求められています。
避難及び消火上必要な敷地内の通路の見直し
大規模な木造建築物等に係る敷地内通路について、道路に面する部分のほか、避難及び消火上支障がない部分の周囲では通路設置を不要とできることが明確化されました。
改正された条文では、以下のように規定されています。
主要構造部の全部が木造の建築物(法第二条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物を除く。)でその延べ面積が千平方メートルを超える場合又は主要構造部の一部が木造の建築物でその延べ面積(主要構造部が耐火構造の部分を含む場合で、その部分とその他の部分とが耐火構造とした壁又は特定防火設備で区画されているときは、その部分の床面積を除く。以下この条において同じ。)が千平方メートルを超える場合においては、その周囲(道に接する部分その他避難上及び消火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分を除く。)に避難上及び消火上有効なものとして国土交通大臣が定める基準に適合する通路を設けなければならない。
引用:国土交通省「新旧対象表」
「道に接する部分その他避難上及び消火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分」が除外対象として明記され、すべての周囲に通路を設ける必要がなくなります。
既存の建築物への制限の緩和
既存建築物の大規模修繕または大規模模様替を行う際の現行基準適合義務について、緩和措置の対象に屋根、外壁、軒裏の防耐火性能に関する規定が追加されました。
改正により、緩和措置の対象部分が詳細に列挙されています。
具体的には、建築基準法施行令第137条の12第三号に規定される部分として、屋根(第百九条の三第二号)、外壁(第百九条の三第一号ハ、第百十五条の二第一項第七号ハ)、軒裏(第百十五条の二第一項第七号ニ)などが新たに追加されました。
出典:国土交通省「新旧対象表」
築年数の経過した建物をすべて現行基準に合わせると工事負担が大きくなり、改修が進みにくいという課題がありました。今回の改正により、一定の条件下では現行基準への全面的な適合を求めず、既存建築物の改修工事を進めやすくなります。
建築基準法の規制対象とするエレベーター、小荷物専用昇降機の範囲の見直し
労働安全衛生法で規制を受ける事業場内の簡易リフトについて、建築基準法におけるエレベーター及び小荷物専用昇降機の規制対象から除外されました。
改正された条文では、エレベーターの定義が以下のように変更されています。
人又は人及び物を運搬する昇降機(次号に掲げるものを除く。)並びに物を運搬するための昇降機(労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第一条第九号に規定する簡易リフトを除く。第三号において同じ。)でかごの水平投影面積が一平方メートルを超え、又は天井の高さが一・二メートルを超えるもの(以下「エレベーター」という。
引用:国土交通省「新旧対象表」
「労働安全衛生法施行令第一条第九号に規定する簡易リフトを除く」という文言が追加され、工場や倉庫で使用される簡易リフトは建築確認の対象外となります。二重規制が解消され、事業者の手続き負担が軽減されます。
緩和措置を受けるための注意点

内装制限をはじめとする今回の緩和措置を適用する際には、いくつかの重要な注意点があります。
設計上の要件や、避難安全検証法との兼ね合い
緩和措置を受けるには、国土交通大臣が定める基準に従う必要があります。具体的な基準は別途告示で示されるため、施行前に必ず最新の告示内容を確認してください。
避難安全検証法を適用する場合、内装制限の緩和との関係を慎重に検討する必要があります。検証法による性能評価と、緩和措置の要件が矛盾しないよう、設計段階から総合的に判断することが重要です。
専門家への相談が重要
今回の改正は防火・避難に関する専門的な内容が多く、適用には高度な技術的判断が必要です。建築士や防災の専門家に相談し、適切な設計を行うことが不可欠です。
特に木造建築物の設計では、構造と防火の両面から検討が必要になります。木材の防火処理や被覆方法、防火区画の設定など、専門知識が求められる場面が多くあります。
確認申請の際には、審査機関との事前相談を行い、緩和措置の適用可否や必要な書類を確認しておくとスムーズです。地域によって運用に差がある場合もあるため、所轄の特定行政庁の見解を確認することをおすすめします。
緩和されたとはいえ、安全性の担保は必須
内装制限の緩和は、安全性を犠牲にするものではありません。最新の技術や知見に基づき、合理的な基準へと見直されたものです。設計者は安全性の担保を最優先とし、基準を満たすだけでなく、実際の使用状況や想定されるリスクを考慮した設計が求められます。
火災時の避難安全を確保するため、内装材の選定、排煙設備の配置、防煙壁の構造などを総合的に検討してください。緩和措置を活用しつつも、建築物の用途や規模、利用者の特性に応じた適切な防火対策を講じることが重要です。
完成後の維持管理も安全性に直結します。定期的な点検や清掃、設備の保守を適切に行い、設計時に想定した性能が長期的に維持されるよう配慮が必要です。
まとめ:建築基準法施行令改訂の内装制限緩和ポイント
緩和措置の適用には国土交通大臣が定める基準への適合が必要で、具体的な要件は別途告示で示されます。専門家への相談を行い、避難安全検証法との兼ね合いや設計全体のバランスを考慮しながら、安全性を最優先とした設計が求められます。適切に活用すれば、木造建築物の可能性が広がり、持続可能な社会の実現に貢献できる改正といえます。






